顔面けいれんとは、どのような病気でしょうか?

顔面の片方の筋肉が、本人の意思に関係なく勝手にぴくぴくけいれんする病気です。最初は下眼瞼の筋肉のけいれんが始まり、次第に強くなりながら顔面全体、さらにくびのあたりまで拡がっていきます。人前に出たり、電車に乗ったりとかで緊張するとこのけいれんは強くなります。この疾患は女性に多いので、悩みも多くなります。けいれんが強くなると睡眠中にも起こります。

なぜこのけいれんが始まるのでしょうか?

顔面神経は脳幹から出て顔面の筋肉に分布しますが、その近くを走っている動脈がこの神経の根元のところを圧迫しますと神経線維の電位に異常をきたし、顔面の筋肉がけいれんするようになります。血管が神経を圧迫しているかどうかを確かめるには、MRIで判定します。

なぜ症状が進行して来るのでしょうか?

それは、顔面神経の傍を走る動脈が加齢、また動脈硬化とともに次第に屈曲して来て神経をより強く圧迫するようになるからです。

顔面けいれんの治療法はどのようなものがありますか?

精神安定剤も含めて、どの薬も効果ありません。

神経ブロックという手技で、しばらくけいれんを抑える方法があります。これはボツリヌス菌という神経毒素を顔面神経の顔面の枝に注射して、神経・顔面筋を麻痺させる方法です。しかしその効果は約3カ月間で、また症状は再発してきます。

根本的に治癒させるのは、その原因である神経圧迫血管を手術的に神経より遊離して、圧迫をとってやる方法です。手術は全身麻酔のもとで、耳の後方の頭蓋骨に10円硬貨大の穴を開け手術用の顕微鏡を用いて圧迫している血管を神経より慎重に遊離し、血管がふたたび神経を圧迫しないようにします。手術時間は、全身麻酔時間も含めて大体4~5時間位です。

手術による治癒率、再発率はどのくらいですか?

一般に治癒率は術後1年経過の時点で判定しますと 80~90%、再発率は10~20%位です。

手術による合併症はありますか? あればどのようなものですか?

この手術でときに起こりうる可能性のあるのは、次のようなものです。

[聴力障害]
顔面神経と聴神経は並んで走行していますので、術中に聴神経に負担がかかると術後術側の聴力障害を来たすことがあります。その予防には術中聴神経機能をモニターして異常があれば事前に判るようにします。しかし約**%の確率では聴力障害が起こる可能性はあります。また開頭部位の近くの頭蓋骨に蜂の巣のように見える場所があり、そこに穴が空きますと術後脊髄液が流れ込み聴力が低下することがあります。これは術後次第に吸収されます。

[舌咽・迷走神経障害]
これらの神経も顔面神経のすぐ傍を走っていますので、手術後麻痺症状として声のかすれ、嚥下障害を来たすことがありますが、これらは次第に改善します。

稀に顔面神経麻痺を起こすことがありますが、これも大抵は次第に改善します。