顔面痙攣は、片側顔面痙攣ともいいます。最初は片側の目の周りの痙攣(ぴくつき)からはじまり、 片方の顔の筋肉、表情筋(頬や口の周り)に及び、さらに首の前にある筋肉に痙攣が広がることもあります。 ストレスや精神的に緊張する時に症状が強く出ますが、進行すると痙攣している時間が長くなり、 目が開けられなくなることや、口が曲がった様な状態になることがあります。 平均年齢は50~55歳程度より認められ、女性が男性の2~3倍と女性に多いことが知られています。 30歳以下では稀になります。
顔面神経(顔の表情筋へ指令を伝える運動神経で脳幹部から出て、顔の筋肉へ入ります。)が 脳深部に存在する動脈(小脳の動脈や椎骨動脈)に圧迫されることが原因です(図)。
片側の顔面神経が脳血管により圧迫されて生じるために、両側の顔には同時に起きません。 両側に症状が認められる場合には、眼瞼痙攣などを考える必要があります。 良性の腫瘍が神経を圧迫することによって片側顔面痙攣を起こすことが、稀にありMRI検査を行う必要があります。 このMRIによって、神経への圧迫血管を同定することが可能です。
病気を未治療で経過観察を行っても、生命に関わることはありません。 しかし、対人関係に苦労したり、片目をつぶってしまうために仕事上の不自由であったり、運転ができないことがあります。 治療方法は、手術、ボツリヌス療法、薬物療法があります。 薬物療法は効果が少なく、一時的です。ボツニヌス療法は、毒素を顔面神経と顔の筋肉の伝導をブロックすることにより、 痙攣は軽減、消失しますが、効果は3ヶ月ほどであり、治療を繰り返す必要があります。
手術は神経血管減圧術と言われており、最も根治的な治療方法です。 顔面神経を圧迫している血管を剥離、移動させて、この圧迫を解除します。 手術は全身麻酔で顕微鏡を用いて精密に行います。 ただし、開頭手術であり、リスクも伴いますので、十分に手術の有効性と危険性を理解しておく必要があります。 これまで永廣が150人以上の人に手術を行っています。この手術により80~90%の人は痙攣が止まります。 痙攣が術後も残存あるいは再発する場合は10~20%です。 手術の合併症も数%の人で手術側の聴力が低下する程度で、 重い手術合併症は極めて稀です。これらの成績は、この手術を普及させたジャネッタ博士のグループをほぼ同程度です。